出題傾向

 これも算数と同じ理由で深く言及しないが、麻布の国語は毎年同じような傾向が続いている。
ずばり、『物語文』である。『論説・説明文』(以下『論説文』という)は出ない!
しかも物語が1文だけの出題である。(平成12年のように2文出た年もあるが・・・)
だからといって易しくはない。文もおそらく日本で一番といっていいくらい長いし、漢字や
選択肢問題も出ることはあるが合否の分かれ目はやはり記述だ。従って攻略法としては
「長文を如何に早く読み、何を捉えるか?」「記述をどう鍛えるか?」である。


論説文と物語文

 具体的に攻略法を書く前に「論説文」と「物語文」の違いをはっきりさせておきたい。


国語の問題は「読む」ことと「解くこと」で成り立っている。それぞれの難易度は概ね次のようになる。
論説文・・・・・「読む」こと→難しい
        「解く」こと→易しい
物語文・・・・・「読む」こと→易しい
        「解く」こと→難しい


つまり、論説文は学者や研究者が考えたことが書いてあるので子供が読むには難しいが、筆者の考えが非常に明確に理路整然と並んでいるので解答は導きやすい。解答がそのままの形で本文に書いてある場合も少なくないので、抜き出す形で解答が出来る点も有利だ。
一方、物語文は比較的平易な文章で成り立っている。しかも、会話文や情景描写などが読解を手伝ってくれるので読みやすい。しかし、登場人物の心境などははっきりと書かれていない場合が殆どなので解答はしにくいのである。

麻布は物語文が出るので読むことは大して難しくない。問題は「解く」ことである。

全部読むかどうか・・・

 「読む」ことは難しくない、と書いたがこれだけの長文を読みこなすのは少しやっかいだ。
 「全文を読む必要はない!設問で聞かれている箇所の前後3行だけ読めば良い!」
という先生がいるがこれは論説文の場合であって、物語文でやるのは危険である。(僕は論説でも全文読むべきだと思っているが。)なぜ、物語は全文を読まなければいけないのかというと、主人公の心情の変化が捉えにくくなってしまうからである。

 だから、麻布の国語に関しては長文ではあるが必ず

最初から最後まで全文を読む必要がある。


いきなり読み始めるな!

 試験開始と同時に本文をいきなり読み始めてはいけない。必ず、設問を先に読むこと。設問は本文に何が書いてあるかを知らせてくれる最良のヒントだからだ。ある程度のあらすじが分かってしまうことも多い。何が書いてあるか分からない文章を読み始めるより、あらかじめ、ある程度何が書いてあるのか分かって読んだほうが理解も速いし、読むスピードも速いものだ。

だから、必ず設問を先に読むこと!

 隣の生徒がどんどん先を読み進めていても気にしなくて良い。彼は内容が頭に入っていないはず。落ち着いて設問を先に読むこと!設問で聞かれる事柄も頭に入るので、その点に気を付けながら本文を読むことも出来る。良いこと尽くめだ。


時間配分

 設問を先に読むと読むスピードが速くなる。しかも物語文はもともと速く読める。


そのことを踏まえると麻布の国語の試験時間60分は、


   2分 で設問を読む。
  10分 で本文を読む。
  45分 で解答する。
   3分 で見直しをする。


というのがベストである。当然、上記の値は目安であるが、是非、過去問で時間を計って解いてみて欲しい。


読む訓練の仕方

 「家ではお母さんの前で声を出して読み、聞いてもらうこと!」と指導する先生がいるが、これには大反対である!そもそも本番の試験会場で声なんて出せない。しかも生徒にこれをやらせると、母親の目が気になり「間違えないように、つっかえないように」読もうとする。そのことに意識が行き過ぎるため、本文の内容が殆ど頭に入らない。
 

だから、家でも「黙読」するべきである。
 

 スピードを付けたいのであれば「読む」しかない。自転車に乗るためには自転車に乗らないと上手くならないのと同じで、読むスピードを付けたいのなら本を読むしかない。読んで欲しい本は後述する。


読んでいるときの注意点

 漠然と字面だけ追っていくのは論外である。いくら速く読めてもダメである。麻布の国語で一番聞かれるのは「心情変化」である。だから、登場人物の気持ち・心情を追いかけながら読む必要がある。それが分かる箇所にはラインを引くなり印をつけながら読むこと。これはやはり普段からやる必要がある。本を読むときには鉛筆を持ちながら読むこと。
 それから、分からない語句が出てきたら必ず辞書を引くこと。出来ればノートに書き出すくらいの努力はして欲しいものである。


立ち読みのススメ

 「読む」ことが苦手という生徒は、読んでいる時、字面はしっかり追えているのに内容が頭に入ってこない、といういう子が多い。つまり、文章に集中出来ないのだ。読んでいても何かしらの音に反応してしまったり、近くの漫画やゲームが気になってしまったりする。試験中、近くにゲームはないだろうが周りにはライバル達がいる。鉛筆の音はするだろうし、中には貧乏揺すりをしている生徒もいるだろう。そんな中で本文に集中しなければならないのだ。
 鍛える方法がある。本屋に行き、

立ち読みをする。

 それだけである。本屋では当然他のお客さんが周りをウロウロしているだろう。そんな中、本文に集中出来るようになるまで読む訓練をする。読む本は何でもいいが、さすがに分厚い本は時間もかかるので一番お勧めなのは国語の問題集である。問題集のなかの「物語」を丁寧に読んでみよう。読み終わった時、内容が頭に入っていればOKである。設問を解く必要はない。読んで終わり、で構わない。馬鹿げていると思うかもしれないが本当に有効である。しかも、買う必要はないのでお金もかからない。良いこと尽くめである。

漢字や選択肢も出題されるがここでは「記述」の解答に絞って説明する。


自分の言葉で書け!

 過去問の模範解答を見ると完璧な文章が載っている。大人が書いたのだから当たり前である。しかし、実際に解く生徒は小学6年生である。無理に真似をする必要などない。子供っぽい文章で一向に構わない。下手に頑張って大人っぽい文章を書こうとしても採点者に簡単に見破られてしまう。だから、自分の言葉で十分である。胸を張って書こう!


文学的な文章にするな!

 生徒の解答を採点していると、妙に文学的な文章が目立つ。特に国語の得意な生徒がやってしまうことがある。解答は決して文学作品ではないので、そんな必要は全くない。伝えたいことを曲げたり、喩えを使って言い換える必要はない。分かりやすい表現で当たり前に答えるように心がけること。


採点者に考えさせるな!

 頭の回転の速い子にありがちなのが、「自分よがり」な文章になってしまうことだ。つまり、「これくらいのことは分かっているだろうから省くよ・・」と考えてしまい主語や目的語が抜けている文章になってしまうことがある。これはやはり良くない。たとえ本文や設問の内容を知らない人が読んでも意味が通じるような文章にするべきである。採点者に「この文の主語は〇〇だよな?いや、待てよ××か?」などと考えさせてはならない。採点者はそんなに暇ではない。約1,000人分の採点をしなければならないのだから、意味を理解しようと時間を掛けてくれる訳がない。当然バツにして次の採点に進んでしまう。

 これを防止するには、自分で書いた文章を客観視して読んで通じるかどうかを確めてみるしかない。しかし、これがなかなか難しい。大人であってもこの「客観視」は至難の業だ。一番手っ取り早いのは、過去に受けた塾などのテストの解答を自分で読み返してみて欲しい。すでに本文や設問を忘れているくらい古いテストでないと意味がないが、読んでみて意味が通じるだろうか?通じなければ何かがその文章で抜け落ちているはずである。確めて欲しい。


麻布で聞かれる設問パターンは・・・

 麻布で聞かれる記述問題の主なパターンは以下の3つである。

  1. 〜はどういうことですか?説明しなさい。
  2. 〜はなぜですか?説明しなさい。
  3. 主人公の気持ちはどう変化していますか?説明しなさい。

1.について

 これは設問で聞かれている場面が起こった「原因」や「意味」そしてその「結果」などをしっかり理解していればそれほど難問ではない。ぜひ得点しておきたい。落ち着いて答えること。

2.について

 理由を書かせる問題は麻布に限らず頻出であるが、麻布は特に多い。難易度は高くないが解答には深く切り込んだ読み取りが必要になる。例を出して説明したい。下記の二つの解答例を見て欲しい。

問、傍線部アについて、なぜ隆志は母親の手伝いをする気になったのですか?説明しなさい。 

 A. 母親が自分を褒めてくれたから。

 B. 母親が自分を褒めてくれて嬉しかったから。

 AもBも同じ点に注目しているが、Bはしっかり「気持ち」が書かれている。やはりBの勝ちである。Aは浅い。減点は避けられないだろう。麻布の記述では何かしらの事実があったらそれについて登場人物が「どう思ったのか?」まで考えて欲しい。麻布の採点者は必ずここまで考えて採点しているはず。僕が確認したところ、市販されている過去問の解答例ではAのようなものが少なくなかった。僕が採点者であれば容赦なく減点する!皆さんはBのような解答を書く訓練をして欲しい。

3.について

 麻布の国語のクライマックスがこれである。心情変化を問いてくる。

「変化」なのだから必ず始めと後で気持ちが変わっているはずである。パターンはやはり「暗→明」かその反対の「明→暗」が圧倒的に多い。どちらのパターンかは本文をしっかりと読めていれば難しくないはず。そして解答欄をだいたい半分にして、それぞれの気持ちを同量入れるようにしたい。

 それから、文末は「・・・気持ち」あるいは「・・・という思い」としたいが「・・・」に入る言葉に乏しい生徒が多い。「嬉しい」「悲しい」くらいでは人物の細かい心情を表し切れないことも多い。以下に代表的なものを載せておくので確認して欲しい。

「明」のグループ

感謝の気持ち・嬉しく思う気持ち・憧れる気持ち・愛情の気持ち・思いやりの気持ち・いとおしい気持ち・なつかしい気持ち・幸せな気持ち・素直な気持ち・心休まる気持ち・暖かい気持ち・〜したいという前向きな気持ち・〜できたらいいなという気持ち・強く決意する気持ち

「暗」のグループ

腹立たしい気持ち・がっかりした気持ち・あきれてしまう気持ち・気まずい気持ち・残念な気持ち・寂しい気持ち・悲しい気持ち・悲しくやりきれない気持ち・嫌だと思う気持ち・不安な気持ち・つらく苦しい気持ち・打ちひしがれたような気持ち・後ろめたい気持ち・心配する気持ち・〜して欲しいという気持ち・祈るような気持ち

 「これ面白いから読んでみなよ!」と友人が貸してくれた本で、面白かったためしがない!本でなくてもCDでもDVDでも同じだ。やはり自分で興味を持たないことにはダメである。だから、生徒本人が「読みたい!」という意志を持ったら極力それを読ませて欲しい。

 うちの子は「読みたい」という意志がないのですが・・・、という相談を良く受ける。これに関しては意外に簡単な解決策がある。本屋に連れて行けば良いのである。1回でダメなら何回も連れて行く。何回か行けば必ず興味が湧いてくるはずだ。動機は単純で構わない。「タイトルが面白そう」「表紙の絵がきれいだ」・・・。こんなもので良いのか?と感じるような本で構わない。読まないよりましである。そうして読んだ本が面白かったなら、その作者の他の著書を探してみたり、その出版社にこだわってみたり・・、色々広がってくる。そうなればしめたものである。

 上級者になれば読書の時、赤鉛筆を持たせて欲しい。主人公の心情が書いてある、あるいは心情が読み取れる部分に赤線を引いて欲しい。これをすることによって「心情変化」の読み取りが鍛えられる。

 どうしても1冊の本を読めない、という生徒にも策はある。国語の長文読解の問題集を買い、読んで欲しい。「物語・小説」だけで良い。しかも、問題は解かなくて良い。本文だけを1日1文あるいは2文くらいを読むだけでも全然違う。しかも、問題になっている文章は短いのにしっかりまとまっている。分厚い本を読むより力がつくかもしれない。この場合もやはり赤鉛筆を持たせて欲しい。

 それから、語彙力をつけるためにやはり辞書を側に置いておきたい。意味の分からない単語はその都度引いておきたい。その際には調べた単語をノートに書き出しておくべきだ。そうやって調べた単語が貯まってくると、「勉強してる!」という実感も湧いてくるので相乗効果も期待出来る。

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