もう何年も前になるが不登校の生徒さんを受け持っていたことがある。中学生の男の子だった。中一の夏休み以降学校に行けなくなってしまった。僕が受け持ったときには既に中三で、結局卒業まで学校に行くことはなかった。家からも一歩も出ることが出来ず、家でゲームとインターネットをして過ごしていた。このように書くとその子がものすごい特殊な子で俗に言う「オタク」のように感じるだろうが、話すと気さくでおしゃれにも気を遣う普通の中学生だった。

 僕と彼とは何だか気が合って、車の話やペットの話で盛り上がり、時には調子が悪くなったパソコンを直してあげたりもした。何ヶ月か過ぎた頃、お母様から「あの子、先生と会う時だけ笑顔なんですよ。」と言われた。家庭教師として生徒とのコミュニケーションが上手くいっている証拠なので嬉しかったが、良く考えると彼は家族以外の話相手が僕しかいないという現実が肩に重くのしかかった。2年以上、家族以外の人間との接触がないのはやはり異常なことだ。いや、彼が異常者であると言いたいのではない。そのように過ごせてしまう社会が異常なのだ。家にいてもTVやネットで殆ど全ての情報が入ってくるし、顔も知らないメル友とメールの交換をしていればそれが人間関係だと思っている。それは異常だ。やはり人間は人と出会い、話し、ケンカし、傷つき、悩んで生きていくことで成長するのだ。人間関係はメールなどでは解決できないほど、複雑で面倒なものだ。それでも人が人と関係したいのはその中で信頼や愛情の念が生まれることを知っているからに他ならない。彼にとって、僕がそのような人間関係の大切さを気付けるきっかけになってくれれば良いな、と思っていた。連絡を取り合わなくなって久しいが、どうしているのだろうか?久しぶりに電話でもしてみようかな?と思っている。

2009.4.16 家庭教師センター SGW  代表 佐藤 真史

お問合せ・ご相談はこちら

千葉県に本部を置く家庭教師センターSGWでは中学受験・高校受験を目指す都内・県内の生徒さんへ最高レベルの家庭教師を派遣致します。受験指導だけでなく学校の補習・さらには不登校の生徒さんへのサポートも致します。麻布中等の記述対策コースもあります。